伊豆沼・蕪栗沼紀行① ~珍鳥の宝庫、蕪栗沼編~
鳥を見ることのできるフィールドなら、どこにでもある。変な話だが、ただ鳥を見る体験をすれば良いというだけならば自宅のベランダや庭でスズメやハトを見るのでも十分に事足りるだろう。しかし一方で、珍しい天然記念物に指定されるような鳥が毎年大群でやって来て越冬する野鳥観察のメッカと呼ばれるような場所もこの世の中には存在する。
宮城県の伊豆沼と蕪栗沼、それから化女沼は国内有数のメッカの一つと言えるだろう。マガンやヒシクイ、シジュウカラガンなどいわゆるカモの仲間の鳥の中でもガン類と呼ばれる鳥たちの越冬場所として、10月から2月頃の間は大変な賑わいとなる。これらのガン類は伊豆沼や秋田県の八郎潟など狭いエリアに集中して越冬するため、深刻な環境改変が生じた際に一気に絶滅の危機に追い込まれてしまうことが懸念されている。近年の東京近郊ではまず見られない鳥といっても過言ではないかもしれない。
今回の記事は、私が12月に友人とこの伊豆沼、蕪栗沼、化女沼に訪れて探鳥をした時の記録である。
蕪栗沼
東北新幹線のくりこま高原駅は、本当に新幹線の駅なのかと思ってしまうくらいに何もない場所だ。駅前には郊外型のイオンと今回私たちが泊まる予定のホテルが建っているだけで、それ以外には「無」という表現が最も相応しいような場所である。レンタカーを借りて早速最初の探鳥地の蕪栗沼へ向かいたいところだが、カーナビに「蕪栗沼」と入れても出てこない。仕方がないのでスマホのマップとグーグル先生の助けを借りてどうにかこうにか到着。
沼の周りは広大なヨシ原になっている。渡良瀬遊水地などを彷彿とさせるような景色だが、あそこよりも圧倒的に人の数は少ないし、周りにも何もない(笑)。ヨシ原の周りをしばらく歩いていると、待ってましたと言わんばかりの鳥ラッシュ。
蕪栗沼はヒシクイ(オオヒシクイ)とシジュウカラガンが比較的見やすい場所として聞いていたが、圧倒的に数の多いマガンの中からそう簡単に彼らを見つけることができるものなのだろうか? 1万羽単位の数のいるマガンの中から変わり種を見つけるというこのミッションは「ウォーリーを探せ」より難しいのでは?
なんとなく、マガンの群れが来たら写真を撮って異種がいないかどうか確認して、というのを何度も繰り返しているうちに、お目当ての鳥ではなかったもののとても嬉しい出会いもあった。
これらの鳥も限られた生息域でしか姿を見ることができない。こういうの出たらまあテンションは上がるよね。何度も通り過ぎるマガンの写真も綺麗に撮ることができた。
マガンの写真を見返していると……。なんと、シジュウカラガンが群れの中に紛れ込んでいるではないか!?
上の2枚の写真を見て、顔つきの違う個体が紛れ込んでいるのがおわかりだろうか。最初の写真は右側1番上の方を飛んでいる個体、2枚目は中央下の方と左側上の方を飛んでいる個体計4羽。
マガンの群れを片っ端から写真に収めた甲斐があったというものである。非常に嬉しい。ちなみにシジュウカラガンの名前の由来はその名の通り、小鳥のシジュウカラに顔つきが似ているから。
写真を見て興奮していると、何とシジュウカラガンだけの群れがこちらに向かって飛んで来たではないか。
かつて絶滅も危惧されていた、何なら絶滅したとも思われていた時期のあるこの鳥が当たり前のように蕪栗沼の空を行く光景には思わず感動を覚えてしまった。また来年、写真を撮りにリベンジに行きたいと強く思った瞬間だった。
さて、あとはここではヒシクイを見られればもう私は何も言うことがない。沼のすぐ隣を歩いていける道を進む。
しばらく進むと水辺が見渡せる場所に出た。すると、あまりにもあっけないがそこにはヒシクイの姿がたくさんあった。日中、マガンの多くは宮城県内各地の田圃に採餌に出かけるが、ヒシクイに関しては水辺で過ごす個体が多いのかもしれない。
この写真を見てマガンとどこが違うんじゃと思った人もいるかもしれない。
実は簡単に見分けられる場所がある。口元にご注目。マガンはくちばしが基本的に黄色くてその基部が白い羽毛に覆われているのに対し、ヒシクイのくちばしは黒く先端部分だけが黄色くなっている。簡単でしょ? とはいえ、水辺でじっと休んでいるからすぐにマガンかヒシクイかの判断がこの時はついたが、空を飛んで移動している時に双眼鏡や肉眼で識別しようにも中々難しいというのは間違いない。
蕪栗沼では見たかった珍鳥を写真に収めることができた。しかし、宮城のガン類フィールドで見られるのはまだまだこれだけではない。②に続く。
秋の沼と農耕地での探鳥 in川越市
「小江戸」川越へ鳥見に行かん
秋です。鳥たちの渡りも日本から出ていく、日本に立ち寄ってまた他所へ行くという流れのものは後半に差し掛かってきたようです。今までシギ・チドリを海水域にばかり見に行っていましたが、たまには気分を変えて淡水域を好む鳥たちを見てみたいと思い、今日は川越の伊佐沼と周りの農耕地を散策しました。先日、ハジロクロハラアジサシが出たとかでかなりにぎわっていたようですが、残念ながらそちらは既に抜けてしまっていたようでした。ですが、多くの野鳥に出会うことができました。
まず、沼の周りの農耕地のあちこちで見られたのは百舌鳥(モズ)です。ギチギチという彼らの高鳴きを聞くと秋の訪れを感じます。
あと特に目立ったのがサギ類。特にチュウサギの数は多く、あちこちの田圃に立っている姿を確認しました。また、冬羽に衣替えしたために亜麻色は抜けてしまったもののアマサギの姿もまだ残っていました。
冬鳥到来!
また、早くも冬を告げる鳥の姿も見られました。一種目はコガモ。
伊佐沼は類似種の旅鳥シマアジが春・秋に立ち寄る事もあるそうでそちらも期待していたのですが、残念ながらそちらは見られず。
それから地域によっては旅鳥のくくりにされますが、関東ではほぼ冬鳥のタシギ?の姿も見られました。ただ、ジシギ類の識別は非常に難しい! 冬にジシギを見たらほぼタシギで間違いないのですが、今時期だとチュウジシギ、オオジシギ、ハリオシギなど非常に似ている種がまだ日本にいるので正直なんとも……。遠かったので識別ポイントもはっきりとは見えず。とりあえず今回は既に観察経験のあるタシギとしてカウントしておきます。
伊佐沼で見られた野鳥達
今回最も嬉しかったのは、2種類もの初見初撮りの野鳥に出会えたこと。まず1種目がイカルチドリ。コチドリに非常に似ていて見た目だけでは識別困難ですが、明らかにコチドリより大きく嘴も長かったので今回は簡単に識別できました。また、側にいたイソシギとの大きさ比較も大きなヒントになりました。大きさ的にはコチドリ < イソシギ < イカルチドリかなと。
そしてもう1種はこちら。なんと、オジロトウネンの姿を見ることができました。普段よく行く海水域のフィールドではまずお目にかかれないので非常に貴重な出会いです。最初クサシギかなとも思いましたが、大きさがスズメ大で周りのイソシギ・コチドリよりも小さい事から判断できました。
イカルチドリとのツーショも!(笑)
写真あさってたら、コチドリとのツーショもありました。
それからこの前の記事でも紹介したトウネンの姿もありました。でもすぐにコチドリに飛ばされてしまいます。
今時期ホットな鳥見スポットの伊佐沼公園。川越や南古谷に行くことがあれば立ち寄ってみては? もしかしたらハジロクロハラアジサシやシマアジなど鳥オタクでもそう簡単に出会えない珍鳥がいるかもしれません。
今回見られた鳥
スズメ |
モズ |
ハシボソガラス |
ハシブトガラス |
オナガ |
カルガモ |
コガモ |
カワウ |
カイツブリ |
ドバト |
キジバト |
ハクセキレイ |
ムクドリ |
トビ |
カワセミ |
ダイサギ |
チュウサギ |
コサギ |
アオサギ |
アマサギ |
イソシギ |
トウネン |
オジロトウネン |
コチドリ |
イカルチドリ |
タシギ |
計26種類 |
イソシギを愛し、イソシギに愛された1日 ~東京港野鳥公園~
野鳥公園へ
漸く涼しくなってきて夏も終わりだろうと高をくくっていたのに、ここ数日また暑さがぶり返してきているように感じる。さて、本日9月11日は友人と大田区の東京港野鳥公園に探鳥に行ってきた。どうも前日のレンジャーさんのブログ(※1)を拝読すると、サシバをはじめ猛禽類が期待できるらしい。ということで9時開園と同時に入園してスタート!
まずお出向えしてくれたのはおなじみ、スズメ。
どこにでもいるイメージがあるが、近年その個体数は減少の一途をたどっていると聞くことがある。
干潟の方に移動して見ると、出ました。イソシギです。
シギ・チドリ類の中では数少ない留鳥で、比較的よく見られる種類かもしれない。しかし、ここまでクリアに写真撮影できたのは実は今回が初めてかも。園内をピューイ、ピューイと鳴きながらあっちこっちに移動している様子を観察することができた。
2羽、3羽同時に飛ぶ様子も見られたが、基本的に単独での行動を好むイソシギの習性を踏まえると、恐らく縄張り争いであったのではないかと思われる。
イソシギの近くには、最近は毎回姿を見せてくれるカワセミがいた。
どこにでもいるんだけど、やっぱりカワセミがいてくれるとテンションは上がるよね。
さて、他にもいつものサギ類の姿がありました。
更に近くの道路のライトの上にはウミネコの姿も見られた。
森林にも注意しなければならない季節
9月になって、秋の渡りが始まってきたと前回の記事でも述べた。それに伴って、森林性の野鳥達も高山から降りてくるので夏の間は水辺中心に探鳥していれば良かったのが、木々にも注意を払わなければならないようになってきた。ついでに蚊にもね。今日だけで10か所以上も刺された…。
淡水池の周りの森林を歩いている時だった。ピーピーと聞き慣れない鳥の地鳴きが聞こえてきた。一体何の鳴き声だろうと思って蚊の存在も気にしつつもしばらく粘ってみることにした。そう、それは決してヒヨドリでもムクドリでもスズメでも、そしてシジュウカラの声でもなかったのだ。
友達に置いて行かれたことにも気づかないまま(笑)、5分くらい経過しただろうか? 漸く鳴き声の主が姿を現した。しかし、動きが素早い。慌ててシャッターを切るも何の鳥だか皆目見当がつかない。
でもこういう時、決して慌ててはいけない。まだチャンスはあるはずだ。待つこと更に1分、漸く写真の撮りやすい箇所に出てきてくれた。パシャリ!
なんと、センダイムシクイでした! 東北の里山でしか見たことのないような種類が羽田空港のおひざ元のような場所にもやって来るとは…。感動させられますね。森林性の小鳥探しは鳴き声が頼り、聞き慣れない声には敏感にありたいものだ。
ネイチャセンター・観察小屋にて
その後も順調に鳥の出現ラッシュ!
まずは念願の猛禽類、ミサゴ。魚食性のため、彼らがフィールドに現れても周りの小鳥たちがビビることはあまりない。
そしてカワウ。葉っぱやら木の枝やらを咥えて着水している個体が多く見られた。巣材にするのか、ただ意味もなく何となくやっているのか? その答えは彼らに聞くしか知る方法がない。
それからここでもイソシギ登場! ここまでイソシギに出会える日もそうそうないだろう。普段は姿を見る機会は多くても3回くらいなのに今日に限っては10回以上出現している。
イソシギに愛された本日の探鳥はこれにて終了。欲を言えば渡りのシギチが見られたら良かったのだが、それはまた次の機会に温存しておくことにしよう。
※参考資料
1.今日の野鳥公園 : 東京港野鳥公園 レンジャーブログ (blog.jp) (2021年9月11日、最終閲覧)
今回確認した野鳥
アオサギ |
コサギ |
ダイサギ |
カワウ |
カルガモ |
カイツブリ |
コチドリ |
イソシギ |
ウミネコ |
トビ |
ミサゴ |
ハクセキレイ |
ハシボソガラス |
ハシブトガラス |
ヒヨドリ |
ムクドリ |
オナガ |
ドバト |
キジバト |
スズメ |
シジュウカラ |
センダイムシクイ |
計22種類 |
トウネン・ハマシギ・ミユビシギ・ヒバリシギ etc の見分け方これ如何に? 9月5日探鳥記(葛西臨海公園)
雨の朝
9月。ようやっと夏が終わりになってくれ、いよいよ都内各地では秋の渡りシーズンが開幕しているはず。ということで、半日休みを使って葛西臨海公園に探鳥に行くことにしてみた。でも、出かける前から外は大雨。8時には雨が上がるというウェザーニュースを信じて7時に家を出て葛西へ向かう。
葛西に着くも、雨は上がっておらず、しかも余計に強く降っているという始末。うまく濡れない場所を通りつつ、鳥類園を1時間ほど探鳥するも出会ったのはどこにでもいるような鳥ばかり。漸くカワセミを見つけたけど、すぐに何処かに行ってしまわれる始末(写真は過去pic)
「これは今日はだめだな」と思った矢先についに雨が本降りに。泣きっ面に蜂とはうまくいったものだなと思う。帰るにも帰れない状態になったので雨宿りをして過ごすことになった。とはいえ、干潮が10時23分でしかも今日は大潮。シギチ探しには最適のコンディションである事を支えにしばらく待ってみる。9時にようやく雨が上がったので、探鳥再開!
鳥ラッシュきたる!
いよいよ干潮時間まで1時間を切ってきたので、鳥気配が乏しい鳥類園を後にして、海岸の方の干潟に行ってしばらく待っていると…。来ました来ました!
まずやって来たのはアオアシシギ。ずっと見たかったのに中々出会えなかった代表鳥(簡単に見られるはずなのに)。でも、先々週に初めて東京港野鳥公園で見ることができたので今回は2回目。難なく見つけることができた。一度見た鳥は2回目以降非常に見つけやすくなることが多い気がする(例外もいるので鳥との相性の問題か)。
ちなみに、アオアシシギの隣に居座っているのはウミネコ。数少ない1年を通して見られるカモメの仲間である。
彼らを見ていると、やがて人は立ち入り禁止の奥の野鳥保護区から長いくちばしのシギが飛んできた。ホウロクシギ!
5月頃からここにずっといるような気がする。大潮・午前中という条件がそろえば大抵飛んでくるので良いポイントである。今回で3度目の出会い。でもいつも干潟の奥でうろうろしてるので写真の難易度は高め。
ホウロクシギとよく似たシギにダイシャクシギがいるが、こちらとは相性が悪いようでまだ一度も近くでお目にかかったことがない。ホウロクシギの方がレアなのにね。でも、鳥類園のレンジャーの方のブログ(※1)によるとちょくちょくダイシャクシギも出ているそうなのでその内会えたら嬉しい。
ハヤブサ襲来!!
シギの様子を眺めていたら周りのウミネコやサギたちの様子も含めてなんか急にせわしくなった。奥の渚の島の方でトビがカラスに追い回されてはいるが、どうもそれが原因ではないらしい。
何だろうと思ってしばらく見ていたら、ネズミの国の方から何やら大きな猛禽類が猛スピードで飛んできた。その場では識別できないと判断し慌ててシャッターを切る。しかし、ピントが合わない…。唯一まともに撮れたのがこちら。
何と、ハヤブサでした。ハヤブサとは相馬市、多摩川に続いて3度目の出会い。個人的に中々会えない猛禽類である。しかし、いつも遠いので1度も綺麗な写真は撮影できていない。もう少し近かったら、もう少し反射神経が鋭かったら…。恐らくもっとクオリティーの高い写真を撮ることもできたのだろう。悔しいがこれは次回の課題である。
識別の話
ハヤブサを見送り、別の場所に移動。まだ日本にちらほら残っているツバメが飛び交っている場所があったので双眼鏡を向けて見ると、コチドリくらいの大きさの鳥7羽くらいが水たまりをウロチョロしているのを発見。イソシギだろうと思ったが、予想は外れたようである。
めちゃくちゃ識別難しいやつでした。今回は①足の色が黒っぽい、②大きさはスズメ・コチドリ大、③海水環境、④群れで行動、⑤嘴はかなり短めという5点からトウネン(若干赤みがあるので夏羽から冬羽へ移行中or幼鳥)と判断。少なくともこの2羽に関しては。
各個体の写真を家に帰ってから精査して見ると、もう本当に混乱するからやめていただきたいんだけど(嬉しさも半分)、足が黄色いヒバリシギと思われる個体が1羽混じっていることに気付いた。それが以下の2枚。
初見初撮り、ライフリスト165種目! でもあまり識別に自信ないので詳しい人に意見を聴きたいところではある。
この手のデザインのシギ、非常に面倒くさいことに、よく似た見た目の鳥が何種類もいるので識別が非常に難しい。類似種には秋にやって来て越冬、春に繁殖地へと旅立つハマシギ(写真1)、ミユビシギ(写真2)、春と秋にやって来るキリアイ、淡水域を好むウズラシギ、オジロトウネンなどがいる。
更に、トウネンに混じって稀にやって来るヨーロッパトウネン、ハマシギに混ざるサルハマシギといったレア種の可能性も考慮すると…。そして、幼鳥か成鳥か、更に夏と冬とで羽色が変わるなんてことも考慮すると、奥が深すぎで間違いなくヌマにはまる。秋のシギチの識別はベテランでも分からないことがあるというが納得である。おまけに人間と同じように個体差があるようなので、一概に鳥類学的に明らかにされている特徴だけで判定しきれないのもこれ事実。だから面白いんだけどね。
最後に識別簡単! おなじみハクセキレイがいたのでパシャリ。
9月~10月、伊佐沼や横須賀など渡りのシギチや鷹狙いで行ってみたい場所は山のようにあるので困ったものである。ブログの更新頻度上がると思われるので今後もお楽しみに。
※参考資料
1.https://choruien2.exblog.jp 「葛西臨海公園・鳥類園Ⅱ」(2021年9月5日、最終閲覧)
今回見た鳥リスト
ハシブトガラス |
ハシボソガラス |
キジバト |
ドバト |
スズメ |
ムクドリ |
ヒヨドリ |
ハクセキレイ |
シジュウカラ |
カワセミ |
トビ |
オオタカ |
ハヤブサ |
ツバメ |
ダイサギ |
アオサギ |
コサギ |
カルガモ |
キアシシギ |
アオアシシギ |
ホウロクシギ |
トウネン |
ヒバリシギ |
ウミネコ |
カワウ |
計25種類
真冬の福島探鳥記① ~大寒波に見舞われた12月のとある1日のフィールドノート 里山編~
毎日暑くて湿度が高いじめじめした日が続いていますね。少なくない数の人が体力を奪われ、夏にウンザリしているのではないかと思います。そんな今日この頃、ブログずっと更新していなかったなということを思い出し、急に何か文章を書きたくなりました。更新できていなかったのは、そもそも夏は平地に鳥がいなくなる、暑くて出かけたくない、忙しいの主に3つが挙げられますかね。そんな暑い夏にぴったり、さむ~い冬の東北の里山、河川で見られる野鳥について、半年以上前のある一日の探鳥を思い出しながら記していこうと思います。この機会に過去pic大放出したいと思います! あんまり鮮明じゃない写真も多いけど(笑)。今日はまず第一弾、里山の探鳥記です。
さて、時は2020年末。この頃、大寒波に見舞われていた福島市では連日のように大雪が舞い、気温は日中でも氷点下、道路は凍結、山は真っ白という状況でした。実家から車で数十分ほどにある里山も一面真っ白け。地面で採餌する野鳥達にとっては非常に食料調達がしにくい厳しい状況。そんな彼らの頼みの綱はピラカンサの赤い実。草陰に身を潜め、赤い実のなる木の前で長時間粘っているだけで様々な種類の野鳥に出会うことができました。
まず、こちらはアカハラ。普段は地面で落ち葉をざっざっとめくってくっついている毛虫などを食べていますが、雪が降ってしまうとそれができなくなってしまいます。なので、数少ない実に集まってきます。ただ、アカハラは少数派なようでこの1羽が最初に一瞬だけ姿を見せたっきりでこの日は観察することがかないませんでした(むしろ、GW頃に多く見られるイメージ)。
アカハラが行ってしまうと次にやって来たのは…
このヒヨドリ、このピラカンサの木がある場所を縄張りにしていたようで、この後やってくる様々な野鳥達をよく思っていない様子でした。たとえば…
自分より体の大きいトラツグミが実にやってきました。さすがにひるんだのかこの日はにらみ合いだけで、互いに存在を気にしつつ実を食べるだけで争いには至りませんでした。
更に臆病なシロハラが来ました。ヒヨドリの目を盗んでは、他の鳥が食い散らかして地面に散乱している実のおこぼれを失敬している様子でした。
そして次にやって来たのは…。
肉食のイメージしかなかったので、ピラカンサにモズがやって来たのは意外でした。これにはさすがにヒヨドリもビビったのでしょう。自主的に何処かへ逃げてしまいました(笑)。
そしてモズと入れ替わりにやって来たのは、
いつも木に張り付いているイメージが強かったのでこれも驚きでした。体がでかい彼らはとても大食漢で、一気に何十粒も実を食べ始めました。これにはヒヨドリも慌てて戻ってきました。そして…バトル勃発!!
この勝負、どちらが勝ったと思いますか? 答えは皆さんのご想像にお任せします。
ここで赤い実を離れてこの日に出会ったその他の冬鳥についても紹介します。ここからは里山で出会ったというよりはその麓や周りの田畑にいた野鳥がメインになります。
まずはこちら。ジョウビタキ女子です。冬は基本的に1羽で行動する鳥です。男女問わず縄張り意識が強く、他の鳥が来ると激怒して追い払います。人間に対しても威嚇行動をとる場合があります。
続いてこちら、冬鳥の代名詞と言っても良いかもしれませんね。
里山のほど近くの休耕田に優に100羽を超える数のオオハクチョウ(コハクチョウもいたかも)が休んでいました。水辺で見るという印象が強いですが、ある時期を過ぎると、市内各地の田圃で採餌している姿を頻繁に見かけるようになります。
寝ぐせが特徴的なこちらの鳥はカシラダカ。福島では比較的簡単に見られるメジャーな冬鳥ですが、関東圏では絶滅危惧種としても心配されるほど渡ってくる数が激減しているそうです。よく似た仲間に更にレアなミヤマホオジロという鳥がいますが、私は1回しか見たことがありません。カシラダカを見ていると、ジョウビタキが近くに寄ってきました(笑)。
ジョウビタキの縄張り侵入罪で逮捕されたくはないので、失礼して針葉樹に目を向けると、レモンイエローの冬のアイドル、マヒワの群れがいました。個人的に冬鳥で一番好きな子たちです。
更にこの日はこんなレアな子たちの姿も!
感覚的にシジュウカラやコガラ、ヒガラに比べて圧倒的に見る機会が少ない気がします。頭を下にして、キツツキのように木を上下自由自在に走り回ることのできる彼らは森の忍者ともいわれます。よく注意していないと見つけることは困難です。
夏の赤い鳥と言えば、多くの人がアカショウビンを連想するのではないでしょうか?
でも赤い鳥は冬にも見ることができるのです。その代表格がベニマシコと呼ばれるこの鳥。漢字は紅猿子。言われてみれば確かに猿みたいな顔してますよね。フィ、フィッポという鳴き声がセイタカアワダチソウの草原の中から聞こえたら、間違いなく彼等だと思ってよいでしょう。
そして、この日一番驚いたのが…
一生のうち鳥のファンでも図鑑でしか見ることができない、或いは図鑑ですら姿を見ることもない人が恐らく圧倒的に多い、それほどまでに珍しい鳥かもしれないです。実家からすぐの里山周りにまさか寄ってくれているなんて。最初は夢でも見ているのではないかと思いました。だってこんな珍鳥見られるだけでも奇跡。それに普通ならカメラマンが殺到するのに、この日は私一人で1時間も独占して観察することができたのですから…。
他にもこの日はツグミや皆さんおなじみのスズメ、シジュウカラなどの姿もありました。また、シメやアトリといった嘴太めの鳥も観察できました。冬の里山ではこのほかにも数多くの種類の鳥を見ることができるので今から今年の12月が楽しみです。
「ただ生きる」。オオソリハシシギ的な生き方とは?
時々人から聞かれることがある。「誰か尊敬する人はいる?」。私の回答は迷わず「いない」である。世の中で経済的に成功している人間が偉いのか? 歴史上に名を残すような事をした人間が偉いのか? 発言力があれば良いのか? はたまた何か目標を持って忙しくしている人間が偉いのか? 確かにそうかもしれない、いや恐らくそうなのだろう。でも私は人間なんて基本的に調子良い事言ってヘラヘラしている外見の飾りだけの利己的な輩ばっかりだと思っている。勿論私も含めてね(笑)。
でも、心から尊敬できる生命体なら確かに存在する。オオソリハシシギである。なぜって、それは彼らはくだらない利害関係とか他者の評価とかそういった煩わしい概念を持たず、「ただ生きる」を実践している象徴的存在だからだ。先週友人と野鳥公園に行ったとき、幸運にもそんな彼らと出会うことができた。
ちなみに5月には谷津干潟で茶色い♂も目撃している。
生きることに徹した生き方をするオオソリハシシギ。
アメリカの米地質調査所アラスカ科学センターの研究によると、そんな彼らは秋の渡りの時期を迎えると、少しも休むことなくアラスカから越冬地のオーストラリアまでの11000kmを約1週間ずっとノンストップで渡り切るだけの体力を有するという(ルートによっては途中日本に立ち寄ったりする上の写真のような個体もいるけれど)。
もうやばくないですか? ノンストップっていうことは、当然だけど途中どこかでご飯を食べたり眠ったりしないってことである。寒い厳しい気候の土地から豊かな食糧源のある南国への長い道のりを「ただ生きる」ためだけに渡り切ってしまうのである。体力自慢でマウントを取るとかカッコ良い姿を見せるとかそういう感覚ではない。そういう感覚がないからこそ、私の目には彼らの姿が本当にカッコ良く映るのである。
さて、ここからはボヤキである(笑)。課題、就活、仕事、バイトなど時々何のためにやらなくちゃならないのか分からなくなる時がある。それをやってどうなるのか? 更には、病んでるとかではなく(笑)、純粋な哲学的な疑問として自分は人生でどうしたいのか? 何のために存在しているのか? 時々こんなことを大真面目に考えてしまうのであるが答えは全く分からない。本当の意味で分かってる人がいたらスーパーサイヤ人並みにすごいと思うけど(笑)。
でも答えを出す必要なんて多分なくて、しいて言うならオオソリハシシギ的な「ただ生きる」人生の美しさを追求するっていうが一つの回答なのではないだろうか? 少なくとも現時点での私の回答はそれである。彼らは自分自身美しくあろうなどとは考えていない。しかし、「ただ生きる」を実践することで恐らく私よりもずっと多くの地球上で起こっている出来事を日々否が応にも目にしているのである。誰も気に留めないようなことも含めてね。「ただ生きる」彼らを、カメラで夢中に追いかけているうちに私自身もまた彼らのように「ただ生きる」の実践主体となれた日が来たならば、それほどまでに幸福なことは多分ない。
※参考
asahi.com(朝日新聞社):渡り鳥、ノンストップ飛行1万1000キロ 米研究 - 環境
(2021/7/1 最終閲覧)
寄り道の幸運 茨城県龍ヶ崎市
インスタ投稿にもあげた土浦のアカガシラサギ、アマサギ達の大コロニーに感激した私。そこで会った方にこの辺で何か面白い鳥が見られる場所は他にないかと聞かれ、土地勘がなく分からなかったので地図を見て調べてみると、数駅先の龍ヶ崎市駅の近くに牛久沼なる沼が近くにあるではないか。野鳥情報を見ると、どうもヨシゴイとカッコウが出るらしい。ぶっちゃけ体力は半分くらいだったが、これは行くしかないと思った。
というわけで、イオンモール土浦で昼食を済ませたあと、再び常磐線で龍ヶ崎市駅へ。ここ、去年までは佐貫駅っていう名前だったらしいのだが最近改名したらしい。駅から10分ほど歩くと、早速広大な沼が見えて来た。まず迎えてくれたのはコブハクチョウの親子。
田んぼにもいた。これは外部から見たらのどかで愛らしい光景にも映る。しかし、農家の人にとって稲を食い荒らすコブハクチョウは頭を悩ます種。 元々観賞用として放鳥された外来種であるだけに余計にマイナスイメージが大きい。追い払うという人もおり、それを見て可哀想という人もいる。可哀想と外部から言うのは簡単だが、実際生活している人の苦悩を考えると、人にとってもコブハクチョウたちにとってもウィンウィンな対策を考える必要がありそうだ。
難しい話は論文ではないのでここまでにして笑、探鳥にもどる。するとまたもや、外来種あらわる笑。最初お風呂に浮かんでるあの、なんていうのだろう? 黄色いアヒルみたいなプラスチックのやつがあると思うのだが、あれの実物大のおもちゃがプカプカ浮かんでるのかと思った。
でもプラスチックのおもちゃにしては明らかに不自然な生物的な動きをし始めたので、ようやく生き物だと悟る。そう、彼らの正体はシナガチョウであった。
しばらく見ていると陸にも上がってきた。
シナガチョウを見送り沼の周りの公園を歩いていると、ヒバリ。虫を食べていた。
沼周りを奥の方へクソ暑い中歩き続ける。すると、いかにもヨシゴイが好きそうなヨシ原が広がっている場所があった。擬態して見つけにくいというし、しばらく待機して様子を見てみよう。
10分ほど経過したかな? 見られるとは全く思っていなかった鳥がヨシ原の向こうの沼の上空を飛び交い始めたではないか! 飛び方からしてアジサシの仲間であることはすぐに分かった。多分、コアジサシだろう。そう思って写真を撮ったらびっくり。嘴が黄色ではなく、赤。
5月に見たアジサシの渡りはもうとっくに終わっている時期だし、第一彼らはあまり内陸に入らない。ということは……
なんと、クロハラアジサシではないか(笑)! アジサシ類3種目のライファ―! 見た目同様、腹黒い性格の持ち主なのだろうか?
秋の埼玉の伊佐沼が有名だから、そこで見ようと思っていたが、なんとあっさり観察できてしまった笑。棚からぼたもちとはこういうこと。結局、1時間くらいクロハラアジサシと遊んでいたが、ヨシゴイが出ることはなかった。狙っている鳥は見られないけど、思いもよらない、より珍しい鳥が見られるっていうパターンは結構あるんだよね〜。これが楽しみの一つなのだが。
帰りがけにカワラヒワ幼鳥が出た。
そして、最後にはなんと、オオタカまで現れた。
贅沢すぎるバードウォッチングを終え、120%満足で帰宅。今度は冬に来てみたい。